2017年11月10日金曜日

正倉院展

 奈良が一番賑わう季節、正倉院展である。
 相変わらずの混雑だったので、気に入った数点だけの印象しか書けない。
 解説部分は奈良国立博物館の公式文書である。

 第1は、槃龍背八角鏡 [ばんりゅうはいのはっかくきょう]
   『国家珍宝帳(こっかちんぽうちょう)』に記載されている、聖武天皇遺愛の白銅鏡(はくどうきょう)。外形が八弁をかたどる八花鏡(はっかきょう)とよばれる形式をとる。鏡背面の中心には亀形の鈕(ちゅう)(紐(ひも)を通す孔(あな)のあるつまみ)があり、鈕を囲むように2頭の龍が絡み合う。龍の下部には鴛鴦(えんおう)の遊ぶ山岳があり、そこから飛雲が吹き出ている。龍の上部に配された遠山(えんざん)や、流れる雲の表現から、天空を飛翔する龍の姿が表された図様(ずよう)を示すものといえよう。唐からの舶載品(はくさいひん)と考えられる。
 直径31,7cmという大きさを実感できたのが実際に足を運んだ値打ち。

 第2は、玉尺八 [ぎょくのしゃくはち] 
   『国家珍宝帳』に「玉尺八一管」と記されているものにあたる聖武天皇ゆかりの尺八。玉(ぎょく)と呼ばれているが大理石製と鑑定されている。尺八は本来竹製であるが、大理石を用いながら3節の竹管を忠実に模している。宝庫には北倉に5管、南倉に3管の、計8管の尺八が伝わるが、本品はその中でも最も短い。
 大理石で竹そっくりの尺八そっくりさんを作った。
 竹よりも大理石製の方が値打ちがあると考えたか、職人が「どうだ!」と技を見せびらかしたのか。不思議だ。

 第3は、漆槽箜篌 [うるしそうのくご](漆塗の竪琴) 1
   箜篌(くご)は竪形(たてがた)ハープの1種で、アッシリアに起源があるとされる。古代に中国・朝鮮半島・日本などで用いられたが、中世以降に姿を消した。
 本品は宝庫に伝わる2張の箜篌のうちの一つ。現在大破し残欠となっているが、槽(そう)とその下に続く頸・脚柱部をキリの一木(いちぼく)から作り、頸部にカキ材の肘木(ひじき)を挿し込む構造である。共鳴胴となる内を刳()った槽には、黒漆塗(くろうるしぬり)が施され、革で作った鳥獣文を貼付け、花文や山岳文を彩色するという、華やかな装飾がなされていたとみられる。彩色に使用されていた顔料(がんりょう)から、本品は日本で製作された可能性が高い。
 大破した残欠だったのでイメージが出来なかったが、明治期に製作された模造も展示されていたので素人にはよく判った。写真はその模造品。

 第4は、沈香把玳瑁鞘金銀荘刀子[じんこうのつかたいまいのさやきんぎんそうのとうす]
   全長16.1 把長7.8 鞘長11.2 身長6.2 茎長4.9
 刀子(とうす)は紙を切ったり木簡(もっかん)を削ったりするのに用いる文房具であり、また腰から提()げて腰回りを飾る装身具としても用いられた。
 本品は鞘(さや)を玳瑁(たいまい)で飾った気品ある刀子である。沈香(じんこう)貼りの把は新補。鞘は木胎(もくたい)に金箔を押したうえに、黒い斑()の交じる玳瑁をかぶせて作られており、玳瑁の下に金色がのぞく伏彩色(ふせざいしき)の技法を見ることができる。鐺(こじり)(鞘尻(さやじり)金具)や鞘口には、唐草文(からくさもん)を透彫(すかしぼり)し鍍金(ときん)を施した銀製の金具を取り付ける。刀身(とうしん)は平造(ひらづくり)。鍛(きたえ)は板目(いため)で柾(まさ)が入り、刃文は直刃(すぐは)。茎(なかご)は剣先形(けんさきがた)を呈する。
 私もけっこう文房具が好きな方である。
 刀子はいわば「消しゴム」で、公務員の仕事の中には「書写」の占める割合が大きかった。
 こんなきれいな刀子は役人(公務員)の憧れだっただろう。

2 件のコメント:

  1. 正倉院展を観た方にWEB小説「北円堂の秘密」をお薦めします。
    グーグル検索にてヒットし、小一時間で読めます。
    勿論スマホでもOKです。
    少し難解ですが歴史ミステリーとして面白いです。
    北円堂は古都奈良・興福寺の八角円堂です。
    お読みになればきっと奈良の魅力が増すでしょう。

    返信削除
  2.  匿名さんありがとうございます。読み始めています。

    返信削除