2017年7月10日月曜日

ヒアリハット

   あちこちの港でヒアリが発見されたというニュースが流れている。
 猛毒の針を持っていて、刺されたらアナフィラキーショックで死亡することもある殺人蟻である。

 そのニュースを聞く度に私は、その1匹の後ろには329匹のヒアリがいるのではないかと感じてしまう。
 というのも、頭の中でヒアリが「ヒヤリ・ハット」と重なるからである。
 語呂合わせの世界である。

 労働災害防止の世界では、「ヒヤリ・ハットの法則」が有名である。
 少し正確にはハインリッヒの法則と言われ、一言でいえば、ひとつの重大災害の背後には必ず29の軽微な事故があり、更にその背景には300の、ヒヤリとしたような、ハッとしたような異常がある。
 だから、重大災害の反省だけでなく、ヒヤリとした異常、ハッとした異常を見過ごさず、そういう些細な対処をその都度行っておけば重大災害は防げる・・という考え方である。

 反対に言えば、ヒヤリ、ハットの事実を「前向きに」とらえずに、「あかんやないか」と叱るだけの会社ではヒヤリ・ハットは報告されなくなり、つまりは分析も対処もされず、重大災害が起こってから慌てるということになる。
 
 私はこれは、労働災害だけでなく、例えば品質の偽装問題なども同じでないかと思う。
 製造業では戦後最大の倒産といわれるタカダでも、きっと、エアバックの不都合を感じていた人はいたはずだと思う。
 それが報告され、真面目に公表・対処していたら、ここまで深刻な事態にはならなかったように推測する。

 ヒヤリ・ハットが報告され検討される大前提は職場の民主主義である。
 そしてその保証は民主的な労働組合の活動である。
 ところがどういう訳か近頃はトップダウンの企業経営が「効率的」の名の下に賛美されている。
 公共性や公平の原則が何よりも大切な国や自治体の行政にでもその方向に傾いている。
 とまれ、それはハインリッヒの法則に反している。

 重大事件に直面してから慌てるのはいただけない。
 ヒアリのニュースを聴きながらそんなことを考えてみた。
 「1匹のヒアリの向こうには329匹のヒアリがいる」と言葉を掛けて覚えてほしい。
 そして、企業であれ行政であれ、健全な発展のためには民主的な労働組合が非常に重要だと再認識してほしい。

    熱風が吹いてヒアリとグローバル

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