2017年1月8日日曜日

痛快な本を読んだ

   最初に断わっておくと、これまで読んできた本などの印象から、私は佐高信氏も浜矩子氏もそれほど好きではなかった。
 しかし、日本中のマスメディアがアベノミクスを礼讃する中で、その当初から「千万人と雖も吾往かん」と先頭を切って批判し論争の矢面に立ってきたのが浜矩子氏であったことは、好き嫌いは別にして確固たる事実であった。
 そしてアベノミクスが、浜氏の指摘どおり大失敗、大失策に至ったことも確固たる事実である。
 なので、遅きに失したが、いわゆる正月休みに読んでみようと書店で購入した次第。

 感想は、痛快な談論風発に満腹したような感じ。
 少しく長くなるが目次をあげてイメージをお伝えする。

第1章 アホノミクスは戦争国家をつくる政策である
 アホノミクスという幽霊の正体
 中央銀行の本分を忘れた黒田総裁
 中央銀行家の仕事とは何か
 安倍復権こそ自民党の大罪
 タカ派は人より国家に目が行く
 三菱東京UFJ銀行の「英断」
 「マーケット」のいかがわしさ
 新自由主義とは新統制主義である
 いちばん真っ当な中央銀行は?
 達成する気のない物価上昇率2%
 GDP600兆円で戦争国家に
 焦りだした「チームアホノミクス」
 野党は本質的な批判をせよ
 政権が目論む「働かせ方改革」

第2章 貧困が抵抗に向かわず、独裁を支えてしまう理由
 「トランプ勝利」が意味するもの
 ヒラリーの敗因
 公助嫌いのアメリカン魂
 サンダース登場の背景を考える
 弱者が弱者を叩く構図
 「豊かさのなかの貧困」という問題
 人はなぜ税金を払うのか

第3章 人間と人間の出会いとしての経済
 食料自給率と戦争の関係
 「グローバル」を再定義する
 国境を「超える」ということ
 国が第一か、生活が第一か
 「日本会議」を誇大視するな
 「とくし丸」に見る経済活動の原点
 無頓着の連鎖が大破綻を生む
 「ラストワンマイル」の重要性

第4章 地域通貨が安倍ファシズムに反逆する
 言語の統一と通貨の統一
 エスペラント語は何を目指したか
 単一通貨と共通通貨
 仮想通貨の生みの親はケインズ
 格差が地域通貨を生み出す
 すべての通貨は仮想である
 偽物化する日本
 経済からしっぺ返しを喰らう
 政権とメディアが使う「業界用語」
 日銀内部から反乱を起こせ

第5章 マルクスの「資本論」は現代にも有効か
 城山三郎は哲学的に経済を見た
 バブル崩壊のメカニズム
 グリーンスパン元議長の罪
 経済学を目指した原点
 竹中平蔵はゼミの2年先輩
 経済学者たちの自主規制
 「トリクルダウン」の本当の意味
 野党の役割は徹底した批判でいい
 要人は足を引っ張られて当然
 マルクスは革命家ではない
 日本とイギリスの地勢的類似
 頭ではなく、本能的に考える
 「資本論」が描くブラック企業の姿
 官僚こそ無責任の最たるもの

第6章 「反格差」「反貧困」思想とキリスト教
 「規制緩和」という罠
 ゴーン礼讃が一つの転機
 人のために泣けるか
 イエス・キリストの戦闘性
 無関心こそが悪
 「いいかげん」と「良い加減」
 稲田朋美の涙を叱る

第7章 安倍晋三は大日本帝国会社の総帥か
 若い男子に支持される安倍政権
 SEALDs的なるものの未来
 役割仮面社会とアホノミクス
 企業には社会的責任がある
 誰のための同一労働同一賃金か
 若者よ、知性を解放しよう
 単なる記録装置になった記者
 メディアが見逃した「安倍の言葉」

第8章 アホノミクスをどう叩きのめすか
 グローバル市民主義が世界を救う
 市民は皆、クレーマーたれ
 怒りを失くした労働組合
 怒れないのは知性の荒廃
 あらゆる闘争を集約せよ

・・・目次だけで以上である。目次のタイトルからしても私自身不同意の箇所もある。
 しかし、全体としては痛快だった。
 この目次を見て興味を持たれたならば一読をお勧めする。

 折角だから1か所だけ引用させてもらうと、「グローバルを再定義する」の項で浜先生は、 ・むしろグローバル時代はもっと人らしく生きられる時代になってしかるべき。 ・国境なき時代(グローバル)と国境の存在を前提にしなければ生きていけない国家とがせめぎ合うのが今の時代。 ・ですから、アンチ・グローバルという立場をとってしまうと、国家主義の思う壺にはまってしまう ・・と述べられている(実際の内容はもっと長く深い)のが、私などは全く考えてもいなかったいささかショッキングな指摘だった。
 私などは、TPPや構造改革・規制緩和の新自由主義や、アメリカの猿真似の維新の政策に立腹して、「保護主義の何がいかんねん!」とアンチ・グローバリズムを唱えたいクチであったが、「思う壺」にはまってしまわない理論の構築が大切だと反省させられた。宿題をもらったような感じである。

   文字に酔い寒夜忘れて大笑い

4 件のコメント:

  1.  またまた脱線だが、イギリスの脱EUに関する結構な留学経験のある浜氏の発言も「へぇ~~」といいたいような新鮮な指摘だった。
     夏休みには「ヨーロッパに遊びに行く」という言い方・感覚がある。
     フランスやドイツのような権威主義がないのは、本質的に海賊魂があるから。
     静かで落ち着いたイメージがあるが、実は精神的においては流動を好む。
     イギリス人は意外としつこい。嫌なことをよく覚えていて、また嫌がられそうなタイミングでそのことを言挙げすることにこよなき喜びを感じるところがある。
     …ということから、マルクスやケインズにも話は広がり、イギリスのシャドー・キャビネット(影の内閣)に対して民進党の「次の内閣」が批判をすることに怯んでいることにまで話は及んだ。経済の話以外の部分でも非常に面白い。

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  2.  さらに脱線すると、佐高氏が浜氏に「浜さんの批判精神の原点にあるものは何ですか」というのに、「私はカトリック信者ですのでキリスト教精神がベースにあります。〈人のために泣ける〉ということが精神の原点です」と答えたところから展開しているキリスト教の話も刺激的だった。
     翻って、親鸞の、日蓮の、空海の・・・・の教えに従って考えるにこんな不正義は見過ごせないと、どれだけの日本の仏教徒は言うのだろうか。

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  3. 長谷やんに触発されて書店を走り回りやっと買い求めました。見事にアベノミクスの化けの皮を剥がして本当の目的をあぶりだして私に目を覚ましてくれた本でした。しかし笑えませんむしろ行く末が心配です。メディアのニュースや解説をそのまま受けているととんでもないことになってしまいます。TVやラジオの点けっぱなしは止めましょう。

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  4.  「しかし笑えない」との指摘を受けて・・・・、今「青木理著日本会議の正体」を読んでいるのですが、途中で気分が悪くなって、何日も読むのを中断しています。本の内容に気分が悪くなったのではなく、そこで指摘されている事実・現実に気分が悪くなったのです。

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