2016年10月12日水曜日

政府は自衛隊員の殉職を願っている

   11日付け朝日新聞夕刊に「PKO派遣の南スーダン 首都近郊で攻撃 市民21人が死亡」という見出しの記事があった。
 ロイター通信によるとこれは8日に起きたことで、前副大統領派による攻撃らしい。
 休戦などとっくの昔に壊れている。

 記事にもあるのだが、8日というと稲田防衛相が現地を訪れていて「(治安が)落ち着いていることを見ることができ、関係者からもそういう風に聞くことができた」と取材団に語っている。

 おまけに菅官房長官の会見内容を上記記事にくっつけて、「首都ジュバの現地情勢が落ち着いているのは間違いない」と強調したと朝日は伝えている。

 このように隔靴掻痒の紙面にしているところが商業新聞の商業新聞たる特徴で、普通に教養のある人なら「これはおかしい」となるはずだ。

 稲田、菅両氏のいうことがほんとうならロイター通信は大誤報を全世界に発信したことになるし、ロイター通信通りであれば稲田、菅両氏が嘘をついていることになる。
 私は稲田、菅両氏が大嘘をついているのだと思う。

 ではなぜ派遣されている自衛隊員の危険を無視してまでそんな大嘘をつくのか。
 答えは、事実を認めるとPKO派遣の条件が崩壊していることを認めることとなり、憲法9条体制からの脱却という大方針が頓挫するからだろう。
 あえて言うが、このような大嘘つきの心情をおもんばかれば、彼らは南スーダンで自衛隊員の殉職を望んでいるとしか思えないが、残念ながらそういう嫌な予想は遠くなく明らかになるだろう。

 そして、こんなに不誠実で不純な閣僚の発言を、ジャーナリズムを標榜する商業新聞が追及しない現代社会を私は恐れる。
 戦争中軍部は退却を転戦と言い換えた。それが退却であることをジャーナリストは知りながら、唯々諾々と大本営発表を垂れ流し続けた。
 半藤一利・保坂正康の著作のタイトルではないが、「そして、メディアは日本を戦争に導いた」(文春文庫)ことを我々は想起するときだと思う。

 首相の国会答弁まで触れるとキリがないので止めておくが、与党のでたらめが過ぎることに反って不感症になってはならないのではないか。

3 件のコメント:

  1.  本文で軍部は「退却を転進」と嘘をついたと書いたが、昨日安倍首相は「戦闘ではなく衝突だ」と言った。
     この内閣の存在は、一つ一つの悪法以上に危険である。

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  2.  10月13日付け朝日新聞「かたえくぼ」
        南スーダン
      「転進」したらいかが
              ――半可通
        安倍政権どの
             (廿日市・凡馬)

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  3.  10月13日付け「朝日川柳」
        戦争を事変と言った蒸し返し
                  神奈川県 吉井信之

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