2016年9月24日土曜日

もんじゅとISDSを考える

   21日、原子力関係閣僚会議は高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)について「廃炉を含め抜本的な見直し」を表明した。
 高速増殖炉とは、マスコミは「夢のエネルギー」とか何とか言っているが、早い話が軍事用プルトニウムを生産する軍事目的の原子炉である。
 しかも「もんじゅ」は重大欠陥商品で、1983年に工事着手し、1兆2千億円をかけて20数年間で250日しか稼働しなかった。
 「廃炉を含め」ではなくきっぱり廃炉すべきである。

 テレビのニュースでは、その会議を受けて敦賀市長が、「騙されたようだ」と憤慨していた。
 市長の親族が原発の下請け業者であるとのうわさは置いておいても、彼はいったい何を騙されたのか。
 公人であれ私人であれ、自分の頭で検討・判断する能力を欠いていたことを白日の下に暴露したようなものだ。
 否、「騙された」というのは嘘である。2兆4千億円の広告費で黙らされたマスコミもマスコミだが、税金や電力料金で全国民から吸い上げられた札束に群がって、次世代の幸福も全国的な危険も顧みず悪魔に魂を売ってきたのである。

 よくテレビの「街の声」で、「廃炉されたら自治体の予算や雇用が大変だ」という声が流されるが、それなら、自分の自治体の予算のためなら他人が不幸になっても子々孫々が不幸になっても良いのか。
 今まで受領した金品をフクシマに全額お返ししてからモノを言え。
 「文殊」という名をつけられたことに鑑みれば、全国の仏教徒も怒るべきだろう。
 「文殊」という名の下に住民によこしま(邪)な心を植え付けた政府・原発ムラの道義的責任は非常に重い。


 さて、世の中ではTPPというのは農家の問題であるかのような誤解がある。
 ISDS条項の恐ろしさが広がっていない。
 投資家や企業が、投資先の国内法によって損害を被るか、将来得られるはずの利益が得られなかった場合に国家を訴える権利条項である。
 世界銀行の下にある企業家による一審制の密室の「法廷」でそれは裁かれる。

 だから、TPPが成立したのち日本が脱原発を決めた場合、アメリカの原発メーカーは日本政府をISDS裁判に訴えるだろう。
 事実、ドイツ政府の脱原発政策に対して、スウェーデンのバッテンフォール社が約6000億円の賠償を求めて提訴していて、ドイツは敗訴するだろうと言われている。
 小さな国では、国そのものが国際金融資本等に食いつぶされることになる。

 事実そのような事案は世界中で起っている。
 先行する同種の事案ではアメリカが全勝している。
 話を広げすぎるといけないが、農協(米価等)も皆保険(薬価等)も環境、健康、公衆衛生、消費者保護、労働者保護行政等々も、主権(国家)以上の国際企業に蹂躙される。「それは不当な障壁だ!」と。
 公共性のある医療、介護、教育も人権も、非営利原則や共同体の理念も「不当な保護主義だ」と。

 繰り返すが、「TPPを農家の問題だろう」というように軽視すれば、脱原発は不可能、あるいは大きな損害と引き換えになる。
 脱原発の方がよいとお考えの良識ある国民は、そのためにも決してTPPを許してはならないと思う。

 蛇足ながら、敦賀といえば福井、福井といえば北陸というイメージがあるが、地政学的には敦賀は近畿と言っても良いと思う。
 私の誤解であればよいのだが、「北陸福井」ということで、大阪や(瀬戸内側の)兵庫の人々の原発に対する反応が今一つという気がする。勘違いであればよいのだが。
 滋賀県の笑い話に「そんなことなら琵琶湖の水を止めたろか」というのがあるが、敦賀の原発事故では琵琶湖の水が止まってしまう
 と、・・・私は木津川取水の水道水を飲みながら心配している。 

2 件のコメント:

  1.  首相が所信表明演説で、TPPの承認と関連法案の成立を期すと。
     なので、ISDS条項の恐ろしさについて読者の皆さんがそれぞれの言葉で拡散していただきたい。
     

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  2.  韓国政府は米韓FTA(TPPの先行版)でアメリカの投資ファンド、ローンスターから五千億円請求されています。

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